環境モニタリングサービスについて

はじめに
 平成13年の法令改正を機に、個人モニタリングに使用されることの多い積算型線量計を管理区域の境界や事業所の境界等の線量測定に利用することが可能となり、空間線量測定に関するマニュアル等においても、その利用方法が解説されるようになりました。個人線量測定に使用する線量計は、正しく使用すれば空間線量を測定することが可能ですが、互いに校正条件等が異なりますのでので、その使用方法には注意が必要となります。
  ここでは、個人線量計を利用した環境モニタリングサービスを皆様に安心してご利用いただけるよう、個線協メンバー各社が皆様に提供いたします環境モニタリングサービスに関する基本的な共通技術基準等についてお知らせします。

1.個人線量計を利用した環境測定
 個線協メンバー各社が個人モニタリングサービスに使用している各線量計は、一般的に入射した放射線の種類判定や線量算出の際のエネルギー補償等のために幾つかのフィルタを備えています。従って、これらの線量計は、校正方法や線量算出時に使用する基本データ等を適切に選択することで、個人線量測定だけでなく空間線量測定にも使用することができます。個線協メンバー各社では、これまでも個人モニタリングサービスに使用している線量計を使用した環境モニタリングサービスを実施していましたが、今回の法令改正を機に管理区域境界や事業所境界等における空間線量の測定を対象とした環境モニタリングサービスについても、測定に関する基本的な技術基準等の統一を図るべく検討を重ねてきました。
 環境モニタリングサービスに使用する線量計は、基本的に個人モニタリングサービスに使用しているものと同じで、その種類にもよりますがX・γ線をはじめ、β線や中性子を測定することができます。しかし、一般的に事業所境界等における線量レベルは非常に低いことが多く、適正な空間線量の測定には個人モニタリングとは異なる難しさがあります。そこで、次のような各項目について検討し、技術基準の統一を図りました。
①測定対象放射線と報告線量単位について
②自然放射線に関する補正方法について
③使用期間について
④その他関連事項についてこれらの検討結果は共通の技術基準としてまとめ、本ホームページの各種資料・環境モニタリングサービス共通技術基準として掲載しておりますので、こちらをご参照ください。

2.ご使用上の注意点
2.1 線量計の選定
 個線協メンバー各社では、皆様の各種用途に合わせて、測定対象放射線の種類、使用目的(個人モニタリング、環境モニタリング等)に応じるための線量計を用意しています。これらの線量計は、基本的な線量計の構造は同じであっても校正方法や線量当量算出アルゴリズム等がそれぞれ異なり、予め各種の照射試験による基礎データと線量当量換算係数に基づき設定されます。特に、個人モニタリングと環境モニタリングでは、線量計の校正や基礎データの取得試験においてファントムを使用した照射を行うか空気中で照射するかによって、各フィルタの示すレスポンスが大きく異なります。従って、個人線量測定用の線量計を空間線量測定用として使用した場合は、線量を過小評価することになるので特に注意が必要となります。
2.2 バックグラントの補正
 個人線量測定では、自然放射線に起因する線量を補正するためにバックグラウンド測定用の線量計 (コントロール)を同時に使用し、これをバックグラウンド評価に適した場所に保管する必要がありますが、空間線量を測定する際も同様にバックグラウンドの補正が必要となります。個線協メンバー各社の提供する積算型線量計を空間線量測定に使用する場合は、一般的に線量計を壁面等に一定期間設置することになりますが、壁面等の材質によっては、本来の測定対象とする放射線量と同等(以上)の自然放射線量が積算されることがあるので、適正な空間線量が測定できるようにコントロールの設置場所を適切に選定する必要があります。
2.3 早期測定依頼
 積算型線量計は、皆様にお送りするために準備を始めた時点からリーダで測定するまでの間、入射した全ての放射線量を累積します。空間線量測定では、一般的に測定対象とする線量レベルが低いので、測定精度を維持するために一定期間の使用が終了した線量計は速やかに測定依頼をしていただき、余分なバックグラウンドの増加による影響を避けることが必要となります。(これについては、個人線量測定についても同様です)
2.4 積算型線量計の特徴と補正
 積算型線量計は、24時間連続して入射した全ての放射線量を累積します。従って、管理区域境界等の測定場所及び線源の使用時間等の許可条件によっては、該当区域における滞在時間等を考慮し、線量計の測定値から法令の限度値と対比する線量当量を改めて評価する必要があります。   

2021年06月23日